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大学3年 栗田慶子

大学という狭い社会に閉じこもって悶々とした生活を送っていた私にとって、ミャンマーという国との出会い、そしてそこに住む人々との出会いは新鮮で刺激的だった。

1週間お世話になったジャパンハートは国際医療奉仕団でミャンマーのサガインという地区のワッチャ病院を活動の拠点としている。
ジャパンハートのスタッフはみんな無償で働いているという。完全なるボランティアだ。だからといって「すごいことをしている」とか「特別なことをしている」という雰囲気はまったくない。生活の中の一部に患者さんの傷口の手当てがあったり手術があったりする。その地に根付いた医療活動。その姿は本当に自然だった。

ボランティアというと、どこか偽善的であったり「してあげている」という意識があったりするイメージがあるが、ジャパンハートの活動はそんなことを微塵もかんじさせない。看護師さんもお医者さんも患者さんも互いに「生かされている」関係がそこにはあった。

ジャパンハートのスタッフの方が暮らす家には患者さんからいただいた果物や卵、豆などが溢れかえっていた。日本の病院では患者さんからお礼の品であっても物をもらってはいけないという。だが、「感謝をする」という行為は人間にとって自然なこと。
日々がんばっている看護師さんたちに食べてほしいと果物を届けてくれる患者さんとそれを受け取る看護師さん。そこには必ず笑顔があり、心があったかくなる瞬間だった。コミュニケーションの上で大切な言葉の壁があったり、医療資源が足りない中で活動したりするというのは私の想像を超える苦労があるだろう。

日本では勤務時間が決まっているが、ここでは24時間患者さんのことを考え、24時間お医者さんであり看護師さんなのだ。
しかし、辛い顔はひとつも見せないジャパンハートのスタッフが活動するワッチェ病院では毎日笑顔が絶えなかった。

このジャパンハートを設立したのが吉岡先生。吉岡先生は私たちと出会ったその日から帰る日まで、空いた時間があれば色んな話をしてくださった。話といっても医療の話だけではない。先生の生き方、人生観、ミャンマーのこと、日本のこと、戦争のこと、歴史のことなど多岐に渡った。

それに私は最初驚いた。私の持っていた医者というイメージからかけ離れていたからだ。私にしてみれば吉岡先生は医者というよりは経営者、哲学者、歴史学者、そしてなによりも人生の先生というかんじだった。自分の知識のなさに落胆しつつもどの話も興味深く、私に考えるヒント、生きるヒントをたくさん与えてくださった。
私は21年間生きてきたが、そのなかで尊敬できる大人に初めて出会えた。

ミャンマーは一般的に言えば「途上国」である。ミャンマーの人々の収入をみても、「貧困」という言葉が当てはまるだろう。しかし現状は違う。たしかに電力がきちんとこなかったり断水があったりと不便な点はたくさんあるが、農業が盛んな国であるためか飢餓で亡くなる人はほとんどいないという。

のどかな自然に囲まれ、ゆったりとした時の中で、働く人、木の木陰でおしゃべりする人、自転車に乗ってどこかへ出かける人、みんなそれぞれが豊かそうだった。心のゆとりがあった。
世間一般で言われている「貧困」とはなんだろうと思った。現状を自分の目で見ずに、机の上だけの勉強で色眼鏡で見て勝手に決め付ける。
知らないということは罪だと感じた。

ジャパンハートの方たちと過ごした1週間で、時の流れが目まぐるしく速い日本で生活しているときには気づこうとしなかったことにたくさん気づくことができた。人との触れ合い、あたたかさ、生きるということ。社会に出ることを前にして、焦りや不安ばかりが募っていた私にとってミャンマーでの経験は貴重だった。

こんなにも一生懸命がんばって生きている人たちがいる。自分もがんばろう。心から来てよかったと思った。ミャンマーでの出会いを胸に、自分の信じる道を見つけ、迷うことがあっても一歩一歩進んでいきたいと思う。

最後に、私たちを快く受け入れ、貴重な経験をさせてくださった吉岡先生をはじめとするジャパンハートのスタッフの方々にお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。