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 その3
    

大学三年 江口 友起

自分の役割
今回の経験はこの時代に日本人としてこの土地に生まれ、江口友起としてこの家に生まれた私自身の存在意義を問い直すきっかけとなった。
実際のところジャパンハートで短期研修を受け入れが決定してから、先生との再会を心待ちにする反面、医療という私にとって無知のフィールドで私に一体何ができるのだろうか?足を引っ張るのではないだろうか?と不安であった。


案の定最初の二日ほど医療現場での自分の非力さに落胆した。
しかし炊事、洗濯、掃除、滅菌やガーゼなど備品の準備のお手伝いなど私にもできることを精一杯しているうちに意識が変わってきた。「炊事・洗濯・掃除は些細なことではあるが私がやらなければ他の人の負担となり、結果ジャパンハート全体の負担となり、患者さんに最高の医療が提供できなくなるのだ。
これがジャパンハートの中での自分の役割であり自分は自分の役割を全うすればいい」と。
そして悟った。「ジャパンハートの中にも私に役割があるように、私の家族、友達、大学、社会でも私の役割があるのだ」と。
その役割を全うするところに人の喜び、そして自らの喜びが生まれるのではないかと思う。ジャパンハートの皆さんの生き様を見て私も人に、社会に良い影響を与えられる人間になりたいと思った。
私の存在が家族を、友達を、大学を、社会を、日本を、そして世界を明るく照らせるようになりたいと思う。


先生は言った。「この世は水面に石を投げ込んだごとくである。
石が投げ込まれた地点は自分であり、同心円状に広がる円は内側から家族、血縁、地域社会である。このように自分は形作られ、そして影響をおよぼしている。」このお話で最も大切なことはほんの小さな些細な行動もいずれ社会に影響を及ぼす円の一部なのだ、ということだ。

大きなことを望む前に小さなことをきちんとしていかなければならない。そんなことを思い出しつつ、まずは身の回りの整頓をしようと毎朝地味に床の拭き掃除を続けているのだ。


ありがとうの気持ち
一週間の見学を終えジャパンハートの皆さんとの別れを惜しみながら濃密な時を消化するかのごとく私は一人旅に出た。
十日ほどの旅の最後に秘境の地とも言えるような場所にあるゴールデンロックという今にも落ちそうな仏塔を見にいった。

その日の体調は最悪。数日前からお腹を下しろくに食べ物を口にしていなかったがここで行かなきゃ後悔する、と意を決して向かった。冷房の効かない人の溢れた酸欠状態のバスで6時間、四十人ほど詰め込まれたトラックに乗り換え炎天下の山道を一時間、さらに険しい山を一時間以上歩いてようやくたどり着く。

途中多くの人が私を支えてくれた。
道を丁寧に教えてくれた兄ちゃん達。道端のティーショップで休憩をさせてくれたおばちゃん。英語も全く通じないその村で本を見ながらへたくそなミャンマー語で話しかけると喜んで険しい山道を私の荷物を持って一緒に歩き出した子供たち。
ようやく着いた黄金に輝くゴールデンロック。とても一人では辿り着かなかった。人間一人じゃ生きていけない!と心底感じた瞬間だった。


今ここに私がいること。それは幾多の人の助けがあってこその私。これまで一体どれだけの人が私を支え、育んできてくれたかと感謝の気持ちに包まれた。

最終目的地に着いた夜今回出会った数々の人々の顔が思い出された。
死期が迫り病床に伏す患者さん、家計を支えるために学校に行かれない子供、両親がいない子供。そんな苦境を感じさせない彼らの屈託のない笑顔が私を救う。
彼らの生きる強さに圧倒されるとともに、今まで当たり前のように享受してきた数々の幸せに気づいた。


衣食住に不自由がなく家族や友達など大切な人に囲まれて日々を過ごせること、勉強できること、今日も健康に生きていること、自分の努力次第で何でもできること。
この幸せを独り占めしてはいけない。そんな思いを自身の心に刻みながらミャンマーで過ごす最後の夜は静かに更けていった。
最後になりましたが今回多くの大切なことを教えてくださった吉岡先生はじめジャパンハートの皆様、そして健康な体に生み育ててくれた両親に心からありがとう!と言いたいです。
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