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 その2
    

大学三年 江口 友起

人のために生きるということ
 私はこれまでどれだけ人のことを考えて生きてきたろうか。
いつでも自分本位で生きてきた。そんな私にジャパンハートは人のために生きる美しさとその難しさを教えてくれた。先生はじめ看護婦さんや現地のスタッフは四六時中患者さんのことを考えていた。
生活の中に常に患者さんの命を預かっているという意識があり、今あるもので患者さんに最善の医療を届け、そして一人の患者さんの元気な回復が家族はじめ周りの人を幸せにしてゆく姿を見て人のために生きることってこんなにもすばらしいことかと思った。


 また退院していく患者さんからは毎日のようにフルーツ・野菜・ミルク・卵などが届いた。一人当たりの月収平均が五千チャット(日本円でおよそ5百円)あまりの農民にとって貴重品であろう。
私は戴いた食べ物を見ながらジャパンハートの優しさが患者さんに届き、こうして誠心誠意人に優しさで触れ合うと必ず優しさとして自らにフィードバックし、相手だけでなく自らも潤うのだということを実感した。


しかし人のために生きるというのは口で言うほど簡単なことではない。
自分を極限までシンプルにしなければ最善のサービスは提供できない。それができるかできないかは命を懸けてやるか、やらないかの違いだと思った。
先生は何度も言った。「つらいんだ。本当つらいんだ。」と。それでも財産をなげうち日本での地位や名誉も安定した生活も捨てミャンマーでの医療活動を全うする先生。命を懸けてやるとはこういうことなのだ、と先生を見ながら思った。

朝早くおき、病院の仕事だけでなく家事をこなし、夜遅くベッドに向かう二人の看護婦さん。患者さんとジャパンハートの架け橋となり先生の片腕として支える通訳の現地スタッフ。
誰かの幸せのために生きることの究極の姿がジャパンハートの現場にはあると感じた。その姿はとても美しかった。



一人ひとりを大切にする
初めて手術室に入ったときは血を見るだけでぎょっとしていた。
麻酔にうなされる患者さんを目の前に怖くて涙さえ出た。しかし毎日毎日手術室に入るうちいつしか慣れている自分がいた。毎日のように人の生死に立ち会ううちに命の重みが分からなくなってくる医者の気さえ分かってしまう気さえした。


一週間の見学が終わろうとする頃そんなことを感じていると不意に先生に聞かれた。「五百人の命、一人の命、あなたならどちらを選びますか?」そんな先生の問いに私は返答に困った。しばらくの沈黙の後先生は言った。「人の命は数量化できないのだ。私は目の前の一人ひとりを助けるだけだ。」と。

その時私は昨年の夏従姉を診てもらったとき先生が言い残した「何かあったら飛行機で戻ってくるから」という言葉を思い出した。人を選ばず目の前で困っている人のために全力を尽くす。またあるときは一人の命を救うためにジャパンハートの存続を危ぶむほど尽力することもある。

一人ひとりを大切にすること、量ではなく質を、という考えはジャパンハートの根本である。「助けなきゃと自分が思うからただその心の声に従って目の前の人を助けるだけだ」と言う先生の姿に私はマザーテレサを思った。